少子高齢化や都市部への人口集中に伴い、近年「墓じまい」という言葉を耳にする機会が増えました。
実際に、全国的に年間数万件単位で墓じまいが行われているといわれています。
「お墓を守る人がいない」「遠方で維持が難しい」「管理費用の負担が重い」といった理由から墓じまいを検討する人が増えていますが、一方でトラブルに発展するケースも少なくありません。
本記事では、墓じまいで起こりがちなトラブルとその回避方法、そして事前に確認すべきチェック項目を詳しく解説していきます。

墓じまいで実際に起こったトラブル事例【体験談】
事例① 親族間の対立
「父の三回忌をきっかけに墓じまいを提案しましたが、叔父が強く反対し、半年以上口を聞かない状態に…。最終的には弁護士を介して合意書を作ることで落ち着きました。」
墓じまいで最も多いのが、親族間での意見の食い違いです。
- 「墓を残したい」派と「墓じまいしたい」派で対立する
- 継承者以外の兄弟姉妹が反対する
- 遺骨の分骨・改葬先で揉める
親族間の合意形成が不十分なまま進めると、感情的な亀裂が長期にわたって残る可能性があります。
事例② 寺院との離檀料トラブル
「寺から『離檀料は最低でも50万円』と告げられ驚きました。相場を調べた上で、誠意を持って話し合ったところ、最終的に20万円で合意できました。
お寺の境内墓地にお墓がある場合、墓じまいには「離檀」が必要です。
よくある問題は以下の通りです
- 離檀料をめぐる金銭的なトラブル
- 手続き方法がわからないまま交渉がこじれる
- 供養儀式(閉眼供養)の内容や費用での食い違い
寺院によって対応が異なるため、事前の確認と誠意あるコミュニケーションが不可欠です。
事例③ 高額費用の請求
「知り合いの紹介で石材店に依頼しましたが、工事途中で『追加費用』と称して30万円を請求されました。複数見積もりを取らなかったことを後悔しています。」
墓じまいには平均して20〜50万円程度かかると言われています。
ただし、石材店や地域によって見積額に大きな差が出やすく、以下のような問題が起こります:
- 契約後に追加費用を請求された
- 他社と比較せず高額な業者に依頼してしまった
- 見積書の内訳が不明確で納得できない
専門家に聞く!墓じまいトラブルの原因と回避法
石材店の声
「見積もりは必ず複数社を比較してください。同じ墓石の撤去でも10万円以上差が出ることがあります。」
僧侶の声
「離檀料は“お布施”の一種です。寺院により額は異なりますが、誠意を示す気持ちを大切にしていただきたいです。」
弁護士の声
「親族間で揉めるケースは非常に多いです。合意形成が難しい場合は、文書で取り決めを残すことが望ましいです。」
墓じまいにかかる費用と地域別相場
地域別費用目安(1㎡あたり)
- 東京:30〜50万円
- 大阪:25〜40万円
- 京都:20〜35万円
- 地方都市:15〜30万円
地域別の相場比較
地域 | 費用相場 | 特徴 |
---|---|---|
東京 | 30〜50万円 | 墓地が狭く撤去費が高額 |
大阪 | 25〜40万円 | 都市部は高め、郊外は安め |
京都 | 20〜35万円 | 観光地墓地はやや高額 |
地方都市 | 15〜30万円 | 施工業者が豊富で費用差あり |
改葬先の選び方とトラブル防止ポイント
墓じまいの後、遺骨を移す「改葬」先でもトラブルが発生します。
- 永代供養先の情報が不十分だった
- 契約内容に制限があり、後から不満が出る
- 遺骨の引き取り制限や追加費用が発生
永代供養墓・納骨堂・樹木葬の比較
供養方法 | 費用目安 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
永代供養墓 | 20〜50万円 | 維持不要・安心 | 個別期間終了後合祀 |
納骨堂 | 30〜100万円 | 駅近・室内で便利 | 契約期間に制限あり |
樹木葬 | 10〜40万円 | 自然志向・低価格 | 墓標が簡素な場合あり |
行政手続きの不備
墓じまいには「改葬許可申請」が必要ですが、手続きに不備があると進められません。
- 必要書類を揃えていなかった
- 改葬許可証の取得に時間がかかる
- 行政窓口と寺院の連携が取れない
墓じまいでよくあるトラブル一覧
トラブル内容 | 詳細・原因例 | 防止策 |
---|---|---|
親族間の対立 | 墓を残したい/処分したいで意見が割れる | 事前に家族会議を開く |
寺院との関係悪化 | 離檀料や儀式内容で食い違い | 書面で取り決めを残す |
高額な費用請求 | 見積もり不足、追加費用の発生 | 複数社の見積もりを取る |
改葬先での不満 | 永代供養の内容や費用が不透明 | 契約前に現地確認する |
手続き不備 | 書類不足や期限遅れ | 行政・寺院に事前確認 |
トラブルを防ぐためのチェックリスト
✅ 親族間の合意を得たか
感情的な対立を防ぐために、話し合いの場を持ち、同意を文書で残すことが有効です。
✅ 寺院とのやり取りを記録したか
口約束だけでは後々のトラブルにつながります。必ず文書や領収書を残しましょう。
✅ 複数業者から見積もりを取ったか
最低でも2〜3社から比較することで、適正価格を把握できます。
✅ 改葬先の契約内容を理解しているか
「供養方法」「納骨期限」「追加費用」などを細かく確認しましょう。
✅ 行政手続きを確認したか
市区町村の役所に事前相談して、必要書類のリストを入手するのがおすすめです。

よくある質問(Q&A)
Q1. 墓じまいの費用はどれくらいかかりますか?
A. 一般的には20〜50万円程度ですが、墓石の大きさや地域によって差があります。
Q2. 離檀料は必ず支払わないといけませんか?
A. 法律で定められたものではありませんが、長年のお布施や管理を考慮し、寺院に誠意を示す意味で支払うのが一般的です。
Q3. 改葬先に選ぶべき場所は?
A. 永代供養墓や納骨堂、樹木葬など選択肢があります。家族のライフスタイルや信仰に合うものを選びましょう。
Q4. 自分だけの判断で墓じまいできますか?
A. 継承者であっても、親族間でトラブルになる可能性があるため、合意形成を行うことを強くおすすめします。
Q5. 墓じまいは自分で手続きできますか?
A. 書類の申請自体は可能ですが、実際の撤去工事は石材店や専門業者に依頼する必要があります。
まとめ:後悔しない墓じまいのために
墓じまいは単なる「お墓の撤去」ではなく、故人やご先祖への敬意を示しつつ、親族・寺院・行政と調整を重ねる繊細なプロセスです。
- 親族との合意形成
- 寺院との誠実な対応
- 複数業者からの見積もり
- 改葬先の十分な下調べ
- 行政手続きの正確な対応
これらを押さえて進めれば、多くのトラブルは未然に防げます。
墓じまいを検討されている方は、まず「家族会議」と「専門家への相談」から始めてみてください。