最低賃金・労働基準法の基礎|勤務先が守るべき義務とあなたの権利

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働く人にとって、「給与」だけでなく、勤務条件・労働時間・休暇・安全衛生など、さまざまな法律で守られているルールがあります。

ときには勤務先がそれらを守っていないケースも。

この記事では、最低賃金制度や労働基準法を中心に、「法律で守られている権利は何か」「勤務先が守っていないときどうするか」「自分でチェックする方法」などを網羅的に解説します。

最低賃金制度とは

最低賃金法の目的と意義

  • 最低賃金法(昭和34年法律第137号)は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することによって、労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定及び労働力の質的向上を目的としています。
  • 使用者(会社等)は、この法律に基づく最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
    たとえ「合意」があっても、最低賃金以下の賃金契約は無効とされ、その部分は最低賃金額に置き換えられます。

最低賃金の種類

区分内容
地域別最低賃金各都道府県ごとに設定された最低賃金。
通常これが基準となる。
特定(産業別)最低賃金特定の産業について、地域別最低賃金とは別に設定される最低賃金。
これが地域のものより高い場合、産業別が優先される。

適用される労働者・賃金の範囲

  • 正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、臨時雇用者なども含まれます。
    勤務時間、日雇いなどの形態にかかわらず、法律で定められた「最低賃金」以下での賃金支払いは禁止されています。
  • 賃金とは基本給だけでなく、手当・深夜手当・休日手当・残業手当など「労働の対価」に相当するものが含まれますが、最低賃金の額を満たすために交通費や福利厚生だけを加えて補うことは原則できません。

現在の地域別最低賃金(例:関西・大阪近辺)

例として、大阪府を含む関西の地域別最低賃金額を最新のデータから抜粋すると

都道府県最低賃金(時給)発効日
大阪府1,114円2024年10月1日より
京都府1,058円同上
兵庫県1,052円同上

※定期的に改定があるため、最新情報は厚生労働省ウェブサイト等で確認を。

違反した場合の罰則・是正措置

  • 最低賃金法および労働基準法によって、最低賃金未満の賃金しか支払わない場合、使用者には差額の支払義務があります。
  • また罰則規定もあり、地域別最低賃金額を下回る賃金を支払った場合、最低賃金法に基づく罰則(50万円以下の罰金)などがあります。

労働基準法など関連する法律の主要ポイント

最低賃金以外にも、働く人を守る法律はいくつもあり、勤務先が守っていなければ、労働者が被る損害は大きいです。以下に主要なものを解説します。

主な法律・制度の一覧

法律・制度名主な内容労働者の権利/使用者の義務
労働基準法労働時間・休日・休憩・深夜業・時間外労働の割増賃金・解雇制限など法定の労働時間(原則1日8時間、週40時間など)、休息・休日が確保されるべき。
残業や深夜労働には割増あり。
労働契約法労働契約の締結、内容の明示、解雇予告など使用者は労働条件を書面で明示しなければならない。
解雇する際には予告があるか、または予告手当が必要。
労働安全衛生法職場の安全・健康保持の義務職場での危険防止、衛生管理、設備の安全、必要な教育・措置等の義務。
雇用保険法・労災保険法失業・けが等の保険制度失業時の給付、業務中・通勤中の事故での補償など。
男女雇用機会均等法性別による差別の禁止、育児・介護休業など性別や妊娠・出産による不当な扱いを受けない権利。

労働基準法の主要条項とチェックポイント

以下は、労働基準法で特に押さえておきたい条項と、「勤務先はこの点を守っているか?」を確認するチェックリストです。

項目法律の規定(主な条文)チェック項目
労働時間労基法第32条などで、1日8時間、週40時間が原則。
変形労働時間制などは一定の手続きが必要。
あなたの勤務先の契約時間は1日8時間を超えていないか。
超える場合、手当や制度が整っているか。
休憩時間労基法第34条。
「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間」など。
勤務中、きちんと休憩が取れているか。
休憩時間中自由に過ごせるかどうか。
休日労基法第35条。
少なくとも週1回の休日または4週間に4日の休日が必要。
週に1日の休みがあるか。休日出勤が頻繁でその分が適正に補填(代休・休日手当など)されているか。
時間外・休日・深夜手当労基法第37条。
法定労働時間を超える時間外、法定休日の労働、午後10時〜午前5時(深夜労働など)には割増賃金。
超過労働があるなら、賃金に割増が乗っているか。
深夜や休日の労働があるなら、手当があるか。
有給休暇労基法第39条。継続勤務6か月以上・出勤率8割以上で10日。
以降勤務年数に応じて増加。
有給がきちんと付与され、申請しやすい制度になっているか。
取得を妨げられていないか。
解雇・退職労基法第20~21条、労働契約法など。予告期間・予告手当、解雇理由の限定、公正な手続き。解雇の際に理由が明示されているか。
予告があるか、手当があるか。
契約書があるか。
安全衛生労基法、安全衛生法で、職場環境の整備、健康診断、作業環境の監視など。職場で健康診断があるか。
危険有害業務で保護具が支給されているか。安全指導がされているか。

勤務先が法律を守っていないかどうか、自分でチェックする方法

以下は「勤務先チェックシート」と「対応策」です。

チェックリスト(勤務先が守っているか確認するための質問)

  1. 勤め先の時間給・日給・月給は地域別/産業別最低賃金を下回っていないか?
     例:大阪府では現在の最低賃金は約 1,114 円/時です。これを下回っているなら違反。
  2. 労働契約書や雇用条件通知書は書面で受け取っているか?内容に賃金・労働時間・休暇などが明記されているか?
  3. 時間外労働・休日労働・深夜労働があるが、割増賃金は支払われているか?
  4. 1日の労働時間・週の労働時間が法定内か、もしくは変形労働制などの制度が適用されているか?
  5. 適切な休憩時間・休日が取れているか?
  6. 有給休暇が付与されており、きちんと取得できているか?
  7. 安全衛生面で問題がないか? 作業環境、保護具、過重労働、ストレスなど。
  8. 解雇・退職・契約終了時の扱いが明確か?予告や手当があるか?

違反が見られたらどうするか?対応策

ステップ内容
1上司・人事部門にまず相談。
具体的にどの点で法律違反があるか整理して伝える。
2労働組合があれば相談。
ない場合でも、地域のユニオンや労働者団体を使える場合あり。
3労働基準監督署(労基署)に相談・通報。匿名相談が可能な窓口もある。
4法律専門家(弁護士・社会保険労務士等)にアドバイスを求める。
5最後の手段として、裁判など法的手続きも考えられるが、まずは記録を残すこと(メール・書面等)。

事例紹介とよくある誤解

事例(仮想も含む)

事例問題点法律的にどうか
アルバイトで「時給 1,000 円」だが、大阪府の最低賃金が 1,114 円/時なので差額がある最低賃金違反使用者は差額を支払う義務があり、罰則対象にもなる。
病院等で夜勤ありだが、深夜手当が支払われていない深夜割増未払い労基法に基づく深夜割増が義務。未払は違法。
契約社員として「労働者ではない扱い」にされ、有給休暇や残業手当が認められていない労働契約の実態で判断される。
見かけだけ非正規でも法律上の労働者であれば権利あり
労基法・労契法で保護。
実態を基に判断されるので証拠が重要。

よくある誤解 Q&A

QA
Q1:最低賃金が年齢で変わる?A:年齢で最低賃金が変わることは原則ありません。
ただし、未成年者や高校生などで制限がある業種は別ですが、法律上「労働者」であれば年齢で差をつけて最低賃金を超える最低額を下げることはできない。
Q2:交通費は賃金に含まれる?A:交通費は賃金の一部として最低賃金との比較に含められないことが多い(手当として支給されても、最低賃金未満の基本給を補うために交通費を含める形にするのは違法)。
Q3:試用期間中は最低賃金以下でもOK?A:試用期間中でも最低賃金以下に設定することはできません。
最低賃金法は全ての労働者に適用されます。
Q4:残業は自己申請しないと認められない?A:残業・時間外労働があれば、契約・就業規則上認められていれば使用者は割増賃金を支払う義務があります。
申請の有無だけで義務が消えるわけではない。
Q5:法律を知らないから違法でも許される?A:知らないは言い訳になりません。
法律は知らなくても適用されます。
違反があれば是正を求めることができます。

ケース別チェック & 自己診断表

以下は自分の勤務先が「法律を守っているかどうか」ざっと診断できる表です。

10問程度でサッと確かめてみてください。

番号チェック項目はい / いいえ
1時給・日給・月給が地域の最低賃金を下回っていない
2労働契約書/雇用条件通知書を受け取っている
3時間外や休日・深夜労働の際の割増賃金支払いがされている
41日の就労時間が8時間以内か、週40時間以内か(または適用制度が適切か)
5定期的に休憩・休休日が取れる
6有給休暇が付与されており、実際に取得できている
7職場の安全・衛生管理が適切か(保護具、安全教育、設備など)
8解雇・契約終了時に予告や予告手当があるか
9労働保険・社会保険の適用がされているか
10勤務先に相談窓口・苦情申告制度等が整っているか

判定:

  • 「いいえ」が多いほど、勤務先は法律遵守の体制が不十分な可能性あり。
  • 特に「1」「3」「5」「6」が違反の場合、早急に対応を考えたほうがよい。

なぜ法律を守らない勤務先があるのか/リスクについて

違反が起こる背景

  • コスト削減のため、最低賃金未満・残業割増未払いなどを「黙認」するケース。
  • 小規模事業者で労働法令に詳しくない、あるいは人手が足りず管理が甘くなる。
  • 労働者が自分の権利を知らないため、声を上げにくい。
  • 委託形式や請負形式、契約社員・アルバイトなど複雑な雇用形態による誤解。

違反による影響

  • 労働者側:賃金の損失、過労・健康被害・モチベーション低下・キャリアの停滞
  • 使用者側:是正命令・罰金・社会的信用の失墜・従業員の退職率上昇・労働基準監督署の調査リスク

法律を守る勤務先をどう選ぶか ~就職/転職時のポイント

就職・転職を考えている人が「違反しない・安心できる企業」を選ぶためのチェックポイントと、そのサポートをしてくれるサービスを最後に紹介します。

採用面で企業をチェックするポイント

チェック項目なぜ重要か
求人票に「給与」「時間外手当」「休日休暇」の記載があるか細かく書いてあるほど、企業が法令に沿った労働条件を提示している可能性が高い。
曖昧な記載は後でトラブルになりやすい。
面接時に「残業」「休日出勤」「有給休暇取得率」などを質問できるか企業の透明性や対応姿勢がわかる。
答えにくそうなら隠している可能性あり。
社員の口コミ・評判を調べる(特に労働条件・福利厚生の満足度など)実際に働いている人の声がリアル。
違反があれば漏れ聞こえてくることがある。
就業規則があるか/見せてもらえるか労働条件の明文化されたルールが整っているかのバロメータとなる。

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まとめ

  • 最低賃金・労働基準法などは、すべての労働者にとって基礎中の基礎の権利。
    自分の勤務先がこれらを守っているか、自分で確認できるようにしておくことが重要。
  • 違反があれば声を上げたり、外部に相談したりすることができる。
    泣き寝入りしないために、契約書・労働条件通知書などの書面をきちんと保管しておくこと。
  • 職場を選ぶ際には、「法律を守る体制」が整っているかどうかを見極めることが、長く健全に働くためには欠かせない。

そしてもし、就職活動中/転職検討中なら、UZUZ のキャリアサポートを活用することを強くおすすめします。

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よくある質問(FAQ)

  1. Q:勤務先が最低賃金を下回っていたら、その差額はいつ請求できる?
     A:未払いになっている分は、過去にさかのぼって請求できます。
    具体的な期間は、法律や判例による制限がありますが、証拠(タイムカード・給与明細など)を持っていれば、労基署や専門家・弁護士に相談して請求可能です。
  2. Q:ブラック企業と判断できる基準は?
     A:頻繁な残業・残業代未払い・連続勤務・有給休暇が取れない・解雇が不当などが典型的な兆候。求人票や口コミ、面接での質問でこれらを探すことが有効です。
  3. Q:契約社員・アルバイトでも守られる権利は?
     A:はい。労働者であれば形態を問わず、多くの法律上の権利が適用されます(最低賃金、有給休暇、残業手当など)。
    ただし契約内容や勤務時間の条件によって制限があります。
  4. Q:給料が低くて仕方ないと諦めるしかない?
     A:法律上最低限守られる賃金があります。
    それを下回る支払は違法です。
    また、キャリア支援サービスを活用して、条件の良い企業を探す手もあります。

最後に

あなたが「この会社大丈夫かな…?」と思ったとき、まずこの法律のポイントを確認してください。

そしてもし少しでも不安があるなら、専門家への相談や就職サービスの活用を検討するべきです。